8.「他人の山」ばかり登っていて、「本当の自分」を生きていないからではないですか?

「他人の山」を登るのか、「自分の山」を登るのか自問自答するトレーニング

 餓死しない、逮捕されない、病気もない。しかし、世間体や性格に振り回されて、ウキウキではない。それは、なにが原因なのでしょう。

  なぜ、世間体や性格に振り回されるのでしょう。それは、「他人の山」ばかり登っていて、「自分の山」を登ろうしないからではありませんか。
  
  最も大切なことは、自分の本心です。本当の自分の心が分かること、それが一番大事なことです。堂々巡りでは時間だけが過ぎていきます。なんとしても、自分の本心を明らかにしなくてはなりません。

  今まで、心身相関、世間体、性格の問題について見てきました。もう一歩踏み込んでみましょう。「他人の山を登りたいのか、本当の自分を生きたいのか」と質問してください。


◆ストレスの解決法

 ただ、その前に、ウキウキになるためのストレスの解決はどうすれば良いのか、もう一度整理しましょう。ここで大事なことは、ストレスの解決と解消は全く異なるとことです。私たちの頭に浮かぶのは殆どが、解消の方法です。

 解消は、修羅場から離れることが条件になります。家庭や職場から離れて、旅に出たり、温泉に入ったりすることで、ストレスを忘れることです。サウナやエステもこの類でしょう。

 しかし、解消では家庭や職場に帰れば元に戻ります。原因は何も解決できていないからです。旅に出ているときだけ、温泉に入っているときだけ幸せで健康では困ります。私たちが欲しいのは、家庭や職場で幸せであり健康であることです。

 そのためには、ストレスの解決が必要です。しかし、これは容易ではありません。どうすればストレスを解決できるのでしょうか。ストレスは数限りなく降って きます。ストレスの原因を一つずつ解決しようとすると、人生がいくらあっても足らないでしょう。不可能のように思えます。やっと、ストレス病という理解が できたのに、これでは最初から挫折です。

 しかし、安心してください。解決への道が見えています。現実の日常生活で考えてください。同じことが起こってもストレスと強く感じる時もあれば、笑って許せるときもあります。この差は何によるものでしょうか。


  それは、生きている充実感と生命力があるかどうかによるのではないでしょうか。自分が満ち足りておれば、多少のことは笑って許せます。しかし、逆の時は大変です。「あの一言が許せない!」ということで夜も寝られません。
  だから、ストレスの解決法は、ストレスと戦うことではなくて、生きている充実感と生命力を高めることなのです。


◆ストレスの原因は「他人の山」を登る生き方

  では、日常生活で生きている充実感と生命力を失っている原因は何でしょうか。生き方を大きく三つに分けました。第1の生き方は「社会適応優先型」で、 社会適応を優先して自分を犠牲にする生き方です。徐々に疲労が溜まり、生きている充実感が失われます。日本の経済がまだ上昇しているときは、この苦労にも 意味がありますが、すでに行き詰まり、今までので努力は何だったのかと思うと空しさにとらわれ、ストレスをさらに感じやすくなります。

 第2の生き方は、自分中心で社会適応ができない「自己中心型」です。若い世代の方々です。自己犠牲は一切いやで自己主張だけは目一杯するという不満型の人と、不安ばかりで自己防衛だけになるという不安型の人とがありますが、いずれも社会適応が出来ず、生きている充実感が低下し、ストレス一杯になります。

 そして、「社会適応優先型」の人と「自己中心型」の人が家庭や会社で一緒に暮らさなければなりません。価値観もフィーリングも全く異なりますから、話してもわかりません。この世代間の断絶からくるストレスが私たちを最も疲れさせるものかもしれません。

 以上のように、どちらの生き方も充実感を失ってストレスを受けやすくなり、そのストレスが心身相関と生活習慣を乱し、肥満、自律神経系失調症、成人病、最 終的にはがん・脳卒中・心筋梗塞に至る。つまり、肥満や成人病の本当の原因は、「社会適応優先型」や「自己中心型」という生き方からくる充実感の喪失である、これが新しい健康医学「生かされてる医学」の理解です。

 さらに一言でいえば、どちらの生き方も、「他人の山」を登る生き方ではないでしょうか。「社会適応優先型」は まさしく、自分のことは後回しにして、家や会社や国のために頑張るという生き方でした。貧しい時代には、歓びも感動もありました。子供たちからも拍手がき ました。生きてる実感と存在感を感じることができました。しかし、豊かな時代になり、さらに日本経済が下降し始めた今、何のために頑張っているのか分から なくなってきました。ふっと空しさが立ちこめます。

  「自己中心型」の生き方も、自分で獲得した自由ではありません。社会の制度や習慣が壊れたために自由になっただけです。このなかで皆が自分勝手に生きれば、ぶつかり合って不満ばかりになります。
  また、豊かな時代に育ったため、生きていく技術を身につけていません。社会へでてきたらどうして自分を守ったらよいか分かりません。不安一杯になります。「自己中心型」の生き方の方も、社会に振り回されてしまい。「他人の山」を登っていることに変わりはありません。空しくなるでしょう。



◆処方箋は「本当の自分を生きて、自分の山を登り、周囲の人も幸せになれる第3の生き方」

  「他人の山」を登る生き方をしている限り、空しくエネルギーを失っていきます。毎日毎日、ストレスが襲いかかってきます。
 豊かな時代とは、「自分の山」を登らない限り、歓びも感動も得られなくなった時代だと思います。ただ、自分の山だけでは、どこまで行っても自分だけですから、やはり行き詰ります。本当の喜びがありません。ですから、「本当の自分を生きて、自分の山を登り、周囲の人も幸せになれる第3の生き方」が必要です。

 これは「心の時代」の生き方で、まだ実現できていません。しかし、「心の時代」の生き方を実現しない限り、幸せも健康も個性的な仕事も得られません。現在の治療医学では生き方の問題までは解決できません。


 そうです、私の処方箋は、「本当の自分を生きて、自分の山を登り、周囲の人も幸せになれる第3の生き方」です。しかもそれは楽しいことであるはずです。第3の生き方が人生の歓びです。ストレス病の解決のために医者が書く処方箋としては、随分変わったものになってしまいましたが、ここまでお読みいただいた方には納得していただけるのではないでしょうか。


◆第3の生き方のトレーニング

 私たちは幼い日から、「他人の山」を登る教育やトレーニングを受けてきました。小学校、中学校、社会人になってからも、常に「他人の山」を登る教育でした。
 では、第3の生き方のトレーニングは? そのような経験はありません。

 第3の生き方は「心の時代」の生き方ですから、まだ方法もシステムもありません。もし、それがあるのなら現在の日本も世界もこんな混乱に陥ってはいないでしょう。私も、変わった医者にならずに大学や病院におれたでしょう。

 なんとしても第3の生き方の方法が必要です。このように豊かな時代で自由な時代に生まれながら、「他人の山」を登って空しさを感じる生き方は嫌です。

 しかし、大丈夫です。もし、あなたの本心が、本当の自分を生きて、自分の山を登り、周囲の人も幸せになれる第3の生き方なら、それが自分の本当の心なのだと納得できれば、もうゴールが近くなってきています。もう一歩です。

 それでは、次の質問に答えてください。質問の9です。