1.生かされてるのは、純粋な医学的事実です

 「医学的に見て、人間は自分で生きているのですか? 生かされているのですか?」

  医学的に考えてください。この医学的にということがなによりも大切です。「生かされてる」と言うと「宗教ですか」と聞く人がいます。しかし、宗教や道徳の問題ではありません。

  宗教や道徳とは全く関係なく、純粋に医学的に考えて欲しいのです。「医学的な事実としてどちらですか?」ということです。

  人間はおよそ60兆個の細胞でできています。60兆個という数がどれくらいかというと、これはもう想像もできません。

  顕微鏡を見ながら細胞を数えるとします。肝臓でも腎臓でもいいですが、1秒間に数えられるのは、せいぜい5個位でしょう。細胞を1秒間に5個数えるとすると、一人の人間の細胞を数え終わるのに、どれ位かかるかということです。
                                        
  計算してみてください。100才まで生きて数えたとして、4000回繰り返さないと60兆個という数は数えられないのです。しかも、これは夜寝ないで数えた場合です。夜寝ると6000回位かかります。死んでは生まれ直し、死んではまた生まれ直して6000回です。

  これだけ多くの細胞がバラバラでは生きていけません。身体全体として調和して動くために、自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫系などが働いています。 

  今も心臓が動いています。心臓は1日に10万回も動いています。しかも1回たりとも自分で動かしてる人はいません。さらに腎臓も肝臓も肺も自分では動かしていません。

  まして、自分で心臓や肝臓や腎臓を作って生まれた赤ちゃんは一人としていません。一人の人間が生まれ、そして生きているということは、とてつもなく大変なことであり、素晴らしいことです。
                                       
  さらに、私たちが食べている食物はどうでしょうか。植物が二酸化酸素と水と太陽のエネルギーで炭水化物を作ります。また、窒素を取り込んでタンパク質を作ります。
 また、酸素がなければ生きていけませんが、酸素も植物が二酸化酸素を取り込み酸素を作ってくれています。植物がしてくれているこれらの光合成がなければ命は保てません。

  「私たちは、大きな生命の世界の中で、生かされて生きている」。これは宗教や道徳ではなくて、100%純粋な医学的事実です。私はこの発見を最も大事なものと考えているのです。 

 b.「生かされてる医学的事実」は原点

  私たちは、人間の社会だけを原点にして生きています。しかし、この地球の上だけでも数数えられない動植物が生きています。人間は、その一つの種族に過ぎません。その人間の社会だけを原点とするのは変なことではありませんか。

  しかも、社会は変動します。10年もすれば変わります。100年もすれば全く違った社会になっています。日本でも、江戸時代、明治、大正、昭和、そして平成と変化しています。

  そのようなものを原点としていたら、常に変動とともに揺れ動き、とうてい原点にはならないのではないでしょうか。そうではなくて、「生かされてる医学的事実」、これが本当の原点ではないでしょうか。

  「大きな生命の世界で生かされて、社会を営んでいる存在」、それが人間です。動植物は本能でもって生命の世界と調和しています。動植物の本能は実に素晴らしいもので、生きていくことを保証しています。

  人間は、本能から自由になったので、本能だけでは衣食住を得ることも、身の安全を確保することもできません。だから社会を営んでいます。社会は、基本的には衣食住と安全を得るためのものです。
                                       

  まして、まだ人間は、戦争をしたり、飢餓の国があっても、自分たちだけは飽食をしています。まだまだ、人間の社会は未熟なものです。

  だから、社会は人間の手によってもっと良いものしてゆかなくてはならないものです。一人一人が「本当の自分」を生きることができる社会にして行かなくてはならないものです。決して人生の原点になるものではありません。

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