ルネッサンス以前は、太陽が地球のまわりを回っていると信じていました。それが常識でした。今から見るとあり得ないことですが、常識とは、いつの時代もそのようなものです。現代では、「自分で生きている」「私たちは偶然の産物」が常識です。そして、この常識は、確実に私たちを苦しめています。事実は何でしょうか? 見てみましょう。

● 現代人の5つの間違い

 生きている充実感が高いときには、失敗しても、すべて勉強になります。新しい発見であり、新しい人生の出発のきっかけです。しかし、充実感が低下しているときには、どんな小さな事でもストレスになり、悩みや苦痛になります。

 充実感の低下は、心身相関と生活習慣を悪化させ、自律神経失調症や生活習慣病をも発生させます。問題の解決とは、目の前の問題と悪戦苦闘して戦うのではなく、遠回りのように思えても、充実感を高めることが、根本的な解決方法なのです。

 では、この充実感が低下する原因は、何でしょうか。それは、現代の私たちが陥っている「5つの間違い」です。少し難しいことのように思われるかもしれませんが、理解さえ出来れば、そんなに複雑なことではありません。

 個々の悩みやストレスを、そのたびに解決しようとして、悪戦苦闘を繰り返していれば、人生が終わります。根本的に学び、充実感に満ちた人生へと出発しょう。

◆現代人の「5つの間違い」
1.自分で生きている
2.人間は偶然によって発生した
3.死んだら灰になっておしまい
4.人間の価値は社会的な評価や力
5.他人の山を登るのが生きる道

 これらは、私達の常識ではありますが、医学的には、なんの根拠も証明もありません。私たちが信じ込んでいるだけにすぎません。
 第1に、私たちは、「自分で生きている」と信じています。しかし、 それは完全な誤りです。人間の身体は60兆個の細胞でできています。1個の受精卵から分裂し増加したのですが、1個といえど、自分で増やした覚えはありま せん。心臓は1日に10万回動いていますが、1回といえど自分で動かしたことはありません。太陽も酸素も水も、自分で作ってはいません。生かされて生きているというのは、純粋に医学的・科学的事実です。

 しかし、「自分で生きている」と信じているのですから、自分で自分の命を守らなければならないという不安と恐怖、緊張と強迫観念に常に縛られます。このことが、心身相関を悪化させ体調不良を起こします。

 第2には、「偶然によって、アミノ酸や核酸ができ、細胞になり、魚 になり、動物になり、猿になり、人間になった」、そう信じています。しかし、それは証明されていません。科学は、再現できるという保証が必要ですが、再現のために、あまりにも長い年月を必要とするために証明できません。

 なによりも、それが偶然によるものか、必然かという問題は、科学の対象にはなりません。科学は、事実についての関係や法則を明らかにする学問であって、その関係や法則ができたのが、偶然の結果か必然によるものかを判断することはできません。

 しかし、「偶然によって発生した」と信じているのですから、自分も偶然の産物でしかありません。自分の存在価値も偶然でしかありません。それでは、自分を喜べるはずはありません。常に、自信のない自分になります。

 第3には、「死んだら灰になっておしまい」、そう信じ込んでいます。それは、「身体から私は発生した、だから身体の死は、私の死である」と信じているのですが、唯物論という一つの考えであり、科学的な証明は一切ありません。

 科学は、長さと重さと速さ がある物を対象とする学問です。測定できる身体は対象にできますが、測定できない「私」や私の精神は対象にできません。私や精神が、身体から発生したのか どうかは、実験できないので、証明ができないのです。

 しかし、「死んだらおしまい」を信じているのですから、すべては虚無です。何をしても空しいのです。死は、最大のストレスです。

 意識的に、現代人は、死を 直視することを避けようとしていますが、それだけに、無意識の世界で広がり、はっきりとは原因がわからないうちに、生きるエネルギーが奪われていきます。 人生が、灰色に染まっていきます。

 第4には、「自分の価値は、社会の評価だ」と信じています。しかし、それは誤りです。社会は、10年もすれば変わってしまいます。その時その時に変化し不安定な社会は、人間の価値を決めるものではありません。

 しかも、社会の評価が、自分の価値ですから、成功しなくてはなりません。一回の成功では駄目で、成功し続けなければなりません。日本が、発展途上国の時に は、まだ可能だったかもしれませんが、現代のように、落ちていく国になれば、成功し続けることなど、もはや不可能です。

 しかし、それを信じているのですから、いつも人の眼が気になります。いつも不安定です。真面目であればあるほど、うつ病になります。

 第5に は、「他人の山」を登るのは、社会適応の生き方です。貧しい時代は、ご飯が食べられるだけで喜びですから、「他人の山」を登る生き方もできました。豊かな 時代になり、自我が大きくなりました。社会適応することは、自分を抑えることですから喜べません。

 社会的適応しようとする自分と、自分を生きたい自分が、常に葛藤し苦しみます。 新型ストレスです。永遠に葛藤を繰り返し、やがて諦めの人生になります。

 このように、自分で自分の命を守るしかないという不安。しかも、自分は偶然の産物 に過ぎなく、大して価値の無い存在。さらに、決定的なことは、死んだら灰になっておしまいという虚無。そのなかで、社会の評価ばかりを気にして、「他人の山」を登り 続けている人間。それが、現代の私たちです。

 この現代人の5つの間違いの中にあって、私たちは、自由で、爽やかに、ウキウキとして、楽しく生きることなど到底できません。孤立と孤独、不安と不満と傷つく自分になって苦しまざるをえません。それは、当然のことと言えば当然なのです。

 豊かで自由な国に住んでいるのに、あまりにも悲しいことですが、解決することも脱出することもできません。現代人は、このまま、衰退して、滅びていくことになります。なによりも悲しいのは、その希望のない人生、生きる感動の少なくなった日々の影響は、子供たちに強くでることです。多くの子供たちを苦しめていることです。

 それが、事実であるのならまだしも、事実でも真実でもないもののために、衰退していくのだとしたら、充実感を失い、人生が暗くなっていくのだとしたら、悔しいことです。

 では、事実とはどのようなものでしょうか。単なるお話でも、自己説得でもなく、医学的に事実を確認することが大切です。

 顕微鏡が使えるようになったのは、やっと150年前からです。 この150年に私達が知り得た事実は、素晴らしいものです。この医学的事実に立って真実を知りましょう。それが「かぎりなく優しい医学的事実の世界」です。これによって、「7つの自由」を得ることを目指します。

1.世間体からの自由
2.人間関係からの自由
3.性格からの自由
4.過去からの自由
5.孤独からの自由
6.病気からの自由
7.老いと死からの自由