KKさん

『10代後半から20年以上、過食と嘔吐を繰り返していました。

 過食と嘔吐の繰り返しは、時間もお金も体力もとても使います。

 いつも疲れていて、常に食べ物に振り回されているので、何かをする時間と気力がありません。

 学び始めてしばらくは全然変わらなかったのですが、いつの間にか全くしなくなりました。

 私の場合、嫌なことがあったとか、ストレスで過食する場合もありますが、何もないのになぜ食べてるのだろう? と思うことが度々あり、自分でもわけがわかりませんでした。

 今思うと、希望がなかったこと、自分の心が分からなかったこと、「きっちりしなければならない」という親の価値観に縛られて生きていたことが原因かなと思います』。

 KKさんの体験記です。私の診察室にも多くの過食症の方が来られます。過食症は、外から見たらわからないので、他のストレスや苦しみに比べて大したことがないように思われるかもしれませんが、本人にしたら大変な苦しみです。

 そして、治すことが極めて難しいものです。一時的に改善することはできますが、リバウンドを繰り返して心身ともに悪化していきます。繰り返す過食と嘔吐ですから、その悲惨さは想像を絶します。「食べてはいけません!」は何の意味もなく、悪化を増強させるものにしかなりません。

 過食症を治すために、過食と戦っても無理です。食欲に勝てるはずがないからです。では、KKさんの過食症はどうして治ったのでしょうか。

 過食症は、原因ではなく結果です。なにが原因かを徹底的に明らかにして、その原因を根本的に解決しなければなりません。それができれば、過食症が治るだけではなく、楽しく優しく自由に自分を生きることができます。

 KKさんの場合は、希望がなかったこと、自分の心が分からなかったこと、さらに「きっちりしなければならない」という親の価値観に縛られて、不安と緊張が強く、こころの底に不満を抱えて生きていたようですが、それらは別々のことではないと思います。

 「きっちりしなくてはならない」という親の縛りは、自主性や自発性を壊します。希望がなくなり、自分のこころがわからなくなります。何をするにしても不安と緊張が強く、自分を抑えます。

 その不安と緊張を緩和するためと、抑えられている不満を解消するために過食に走っていたのでしょう。その結果、ますます「きっちりできない自分」になり、自己否定や自己嫌悪感が強くなり、それを忘れるためにさらに過食をするという悪循環になっていたのでしょう。

 このように見るとKKさんの過食症は、親の「きっちりしなければならない」という縛りによって自主性と自発性が壊されていたことが原因だと思われます。そして、その縛りから自由になれたことで、気がつくと過食症がなくなっていたということでしょう。時間はかかりますが、根本解決はとっても嬉しいですね。